「京都 手しごと案内帖」 普段の仕事場から VOL.14

蒸し、水洗


今回は、蒸しと水洗についてお話しします。

VOL.13でお話ししました引染工程が終わりますと、生地に染料を定着させる為の蒸し工程に移ります。

引染の段階では、染料は生地の上にのっている状態ですが、蒸すことによって染料が生地に定着し、発色も完全なものになります。


写真のような内部が木で覆われた蒸し箱の中に生地を入れて、蒸します。


まず最初に、蒸す前に湿らせた挽粉(ひっこ)を生地に振りかけます。

挽粉とは、木材を切断した時に出る木の粉のことです。

生地が乾燥していると発色が悪くなるため、水分を加える必要があります。

この挽粉によって生地に適度な湿気を与えます。

挽粉を振りかけてしばらく時間をおくと、生地に水分が移って発色が良くなります。

薄い地色の着物は、この工程を行わないこともあります。


次に、蒸し箱に入れる枠に生地を吊っていきます。

この工程を、「ピンがけ」と言います。

これは、枠の両端に付いている針(ピン)に生地を掛けて吊っていくためにそう呼ばれています。

生地の色や柄、生地の状態などを見て針にかける間隔を調整します。

この時に生地同士が擦れて色糊や染料がつかないように新聞紙を間にはさみながら掛けていきます。

単調な作業に見えますが、熟練職人の技が要求されます。

細心の注意を払う工程と言えます。

次に、蒸し箱に生地を入れます。

通常は、約100℃の蒸気で50分くらい蒸します。

濃い地色の場合は、2回蒸します。

この蒸し時間はあくまでも目安であり、温度、生地の乾燥状態、染料の種類や相性で微妙に異なります。

蒸し箱内の温度と蒸気量、時間の調整は、職人が培った長年の経験が頼りです。

一歩間違えると思っているような色が出なかったり、色落ちの原因となる場合があり、とても重要な工程です。

蒸気の温度と水分が発色の立役者と言えます。


次に、水洗い(水洗)の工程に移ります。

蒸しで友禅糊の中の色素の成分が生地に定着した後、余分な糊を落とすためにこの工程を行います。

かつては、友禅流しと呼ばれ、京都市内の鴨川や桂川といった大きな川でも行われていました。

現在は環境問題もあり直接川に生地を流して水洗いすることはできなくなりましたが、

年に一度だけ、8月の第一土・日曜日に鴨川の三条四条間で行われている京の七夕内のイベントとして友禅流しの実演が行われています。

長時間流水にさらし、色糊を十分にふやかし生地から剥離させ、その後振り洗いをし、仕上げた後乾燥室にて干します。

最近は、水洗いから乾燥まで一貫で行う事が出来る機械式の水洗器が主流です。

強力なシャワーで余分な色糊を取り除く事が出来ます。


次回は、のしについてお話しします。


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