「京都 手しごと案内帖」 普段の仕事場から VOL.19


地直し


今回は,地直しについてお話しします。

地直しとは、いわゆる補正作業で,着物を染色する際に生じた不具合をチェックし、

染めむらやしみをきれいにする仕事です。

着物に付着してしまった、どうしても落ちないシミ等は、地直しと言われる方法で修復します。


まず最初に、シミの部分を完全に脱色して白地に戻します。

そして、新たに周囲の色目に合わせて、色挿し(いろざし)をします。

この色に何を加えればこの色になるかを計算して色合わせをします。

友禅職人でさえ、自作の着物に色飛びをしてしまったり、不可抗力のシミをつける事はあります。

その際、地直しの専門家にお願いをします。

地直しは、色合わせの名人で、永年の経験が必要とされます。

染み抜きに3年、色の補正には10年程の経験が必要と言われております。

色の調合もさることながら、挿す生地の種類によって発色が微妙に違います。

その日の温度、湿度など天候にも左右される、とてもデリケートな仕事です。

派手さの無い職人技に業界関係者の多くが尊敬の念を抱いています。

訪問着や留袖など無地の場面が多い着物を修復するには、無くてはならない技術と言えます。


次に,染色補正技術の基本工程を説明致します。

まず,生地の状態を様々な角度から確認した後、染料が浸透した箇所に薬品を丁寧に筆でつけていきます。

次に熱を加えながら、脱色作用を高めていきます。

生地の状態を確認しながら、負担をかけないように注意することが重要です。

中和して、繊維の中に入り込んだ薬品が残らないように念入りににすすぎ出します。

脱色した事によって、地色の染料も抜けて白い状態になります。

白く抜けた箇所を修正する為に、まず初めに一番大事な色の調合をします。

周りの色と違和感が出てしまわないように染料をかけ合わせて色を調合する重要な作業と言えます。

色の調合をした後、職人の手技で丁寧に色をかけていきます。

どんなに小さい箇所でも、筆先を絶妙に加減しながら周りの色と違和感のないように修正します。

周りと違和感が出てしまわないように、色々な角度から生地と色をかけた箇所を何度も見ては、

加減をしていき色を修正して終わりです。


他に、はき合わせという補正方法があります。

着物が製品なってからの色焼けや、合口(あいくち)という場所の色違い、

これらの不具合を元に修復する為の色掛けの手段のことをはき合わせと言います。

染料を含ませた刷毛を掃くようにして色を合わせたことが語源と言われています。

今では,エアーブラシを使用する等、機械化も進んでおります。


手作業で着物を染める工程上、着物にしみを付けてしまうのは,ある程度仕方がないことと言えます。

そのようなことから、着物製作には「地直し」工程が必要不可欠と言えます。

しかし、綺麗に地直しするには、長年の経験とセンスが要求されます。

この道数十年といえども、センスがなければ仕事の依頼が少なくなります。

職人の手技の善し悪しが、仕事量に色濃く反映されるのが地直しと言えます。


次回は,仮絵羽(かりえば)について、お話しします。

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