「京都 手しごと案内帖」 普段の仕事場から VOL.11
型友禅染め 後編
今回は、引き続き型友禅染めの工程についてお話しします。
糸目型を染める工程が終わるといよいよ色糊を染める工程になります。
特に訪問着や振袖は、総柄で多くの色を使うので、小紋に比べてたくさんの型枚数を使用します。
最近振袖では、1柄で約200枚〜300枚程度の型枚数を使用して染めることが主流となっております。
ある職人曰く、500枚~600枚の型を使う豪華な振袖を染めたことがある、と自慢気に誇りをもってお話しされてました。
一色一色、配色伝票の順番に型を置き、事前に合わせた色糊で職人が丁寧に染めていきます。
基本一枚の型で一色を染めるのですが、一番メインである上前の部分においては、色目を増やすため、二色を一枚の型で染めることがあります。
この作業により、型枚数が減り、時間の短縮になりますが、高度な技術を要するため熟練の職人のみができる匠の技とも言えるでしょう。
この作業を「かき分け」と呼んでいます。
配色伝票通りに型を一枚、一枚、使って染めていくといよいよ最終工程です。
この辺りになるとほとんどの柄に色が入り、引染めで地色を染める前でもとても華やかになります。
最終工程では、この染め上がりの柄に伏せ型を使い、伏せ糊を置いていきます。
伏せ糊で、今まで染めてきた柄を覆い隠すため、初めて見た方は、驚くかも知れません。
この伏せ糊を置く作業により、次の工程で地色を染める「引き染め」を行っても柄に地色が染まりません。
因みに、伏せ糊とはもち米と米糠(こめぬか)と塩をまぜたものです。
季節によって、温度や湿度に気をつけながら、水によって伏せ糊の粘度を調整します。
伏せ糊を置いた後、糊が渇ききらないうちに、引き粉(挽粉)と呼ばれるおがくずで覆い隠します。
この作業は、伏せ糊がひび割れしないように行うものです。
ひび割れが起きると、柄に地色が染まり大変な事になりますのでとても重要な工程と言えるでしょう。
一晩伏せ糊を乾かし、完全に乾いたら板から生地を剝がします。
こうして板場での柄つけの作業が終わり、引き染めの工程へ移っていきます。
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